冬の旅の断片 2011

今回の旅は短く、あっという間に日本に戻りました。
なぜ、寒い季節に日本よりもさらに寒いところに行くのか?
何をしたいのか? と問われても、
本当のところ確かな理由を見つけることはできない。
ただなんとなく日常の中で、埋もれていくのがいやで、
どこかに行きたかったのです。ここでないどこか。
結局はいつもそうなのですが、
何をみつけるという目的もなく、
ただどこか違う場所に身を置きたかったのです。
本当にそれだけの旅なのです。

旅日記というよりは、いくつかの断片を
とり散らかりながら書いてみようかと思います。



【初フィンエア】

どこかに行こうと思うときに、
やはり何度か行って慣れているということもあり、
思い浮かぶのは北欧。のんびりとした人のペースや、
治安のよさ、セルフサービスの店の多さ、
クレジットカードやネット環境のよさなども理由に挙げられます。
つまりは安全で、ぼ〜っとしている女がひとりで行ったとしても、
まぁ、それなりに楽しく過ごせて、無事に帰ってこれるからです。

いくつかのサイトを比較していて、でも結局なかなか決められなくて、
フィンエアの正規のwebでの格安チケットに落ち着きました。

ずっとSAS派だったのですが、
直行という魅力と、あとサーチャージなどを考えると、
フィンエアのほうが安かったというのが事実。

マイルもあるけれど、まぁいいやってことで。
成田〜ヘルシンキストックホルムヘルシンキ〜成田。
でも、サーチャージを入れても10万切る値段だったので、
自分としてはまずまず。

SASよりも出発時間が遅く12時というのもラク

席はネットで買うときに指定できるので、
4列の通路側。運がよければ、横が全部空いてないかなという目論みが
あったのだけど、残念ながら横は親子連れの3人。

どうでもいいことなんだけど、
この親子連れの女のコが、小学5、6年生といったところなのだけど、
爪を伸ばしていて、パールブルーのマニュキュアを塗っていた。
何本かの爪にはシルバーのストーンもついていた。
顔は普通の子供なのに、長く伸ばした爪の細い指先が、
「女」を感じさせて、なんだか正直に言えば気持ち悪く思えた。
スクリーンのタッチパネルをそのコが触ると、
長い爪がカチカチと当たって、
そのたびにざわざわとした気持ちになった。

子供がマニュキュアを塗るのが気持ち悪いのではなく、
(短い爪に真っ赤やピンクのマニュキュアを
塗ったりするのはかわいいと思う。
そして、自分自身も子供のときに遊びで塗っていたし…)

あの長く伸ばした爪と細い指先と、
子供である、そのアンバランスさが、
生理的に気持ち悪かったのだけど、
そんなことにいちいち、
気を取られる自分の心の狭さというか、
そういうものにもちょっと辟易とさせられた。

機内食などは端から期待していないので、
おおむね快適。

なぜかリモコンが動かなくなってしまったので、
ずっとリピートで音楽を聴いているうちに
寝てしまった。

ジュリア・ロバーツの「食べて、祈って、恋をして」を観る。
本を一冊。



【懐メロホテル】

現地時間の15時過ぎにヘルシンキに着く。
陽はすでに暮れかかっていた。

今回のホテルは「ソコスホテル トルニ」。
中心地にあり駅やショッピングモールなどが近いことも
あるけれど、「Torni」=塔の名前の通り、
ホテルのてっぺんが塔になっていて、
ここの最上階には小さなバーがあるのです。
(この塔を見ると、いつも江戸川乱歩を思い出す。
大正っぽいというか、わたしにとってはそんな雰囲気)

最初にフィンランドに行ったとき、コーディネートをしてくれた
Sくんが連れて行ってくれて以来、ここのバーがお気に入り。
ヘルシンキの街を見渡すことができて、とても気分のよい場所なのです。

ホテルの部屋は2階で、眺めは普通。
お部屋はバスタブもあり、壁には小鳥や草花の
ペイントが施してあり、
快適でほんわかと温かい感じでした。

TVのホテルインフォメーションの画面のままにしていたら、
有線(ラジオ)に変わり、かかる曲がマドンナだったり、
マライア・キャリーだったり、イーグルス
ブルース・スプリングスティーンだったり
ちょっと前のヒット曲ばかり。

そんなこともあり、
ちょっとしみじみとしてしまったのでした。




【ハムちゃん】

北欧の子供はめちゃくちゃ可愛い。
とくに冬だから着ぶくれしていて、
それが本当に可愛い!
なんていうか、もうコロコロしていてハムみたい。
ほっぺは赤いし、ぎゅううと抱きしめたくなる。
雪の上をバランスをとりながら、よちよち歩いていたり、
ベビーカーの中にぐるぐる巻きになって寝ている姿に、
なけなしの母性本能が刺激された。
何度か、「子供の写真撮らせて!」って言いそうになった。
今から思えば、勇気を出して言ってみればよかったかもなぁ。




【いまはいないひと】
フィンランドに最初に行ったのは、もう何年前なのかな?
7年? 8年? そのときに仕事で行って知り合ったひとと、
いまだに交流が続いている。自分の人生において、
外国人の知り合いができるなんて、本当に不思議な感じだ。
Tさんとは、いつもヘルシンキに行くたびに、
別荘に招待してくれたり、食事をしたりしている。
中学生並みの英語力しかないわたしにとって、
なかなかハードルが高いことなのだけど(難しい会話はできない)、
そのTさんから、共通の知り合いであるAさんが去年の11月に
亡くなったことを知る。AさんはTさんの義理の弟さんで、
オウルというもっと北の街に住んでいた。
ログハウスの会社を経営していて、仕事で東京に来たときに、
Tさんを通じて「会って欲しい」と言われて、
2回ほど会って食事をして飲んだ。
陽気で気のいいそしてちょっとエロ親父…(笑)
そんな人だっただけに、びっくりしてしまった。
病気というわけではなく、突然だったらしい
(それ以上の話は、わたしの英語理解力では限界…)
人生って儚いもの。
つながりをきちんと大切にしたいなと、あらためて思った。




【雪の街を歩く】
冬の北欧は初めてではないのだけど、
雪が降っていて、暗く、
風があったりするといろいろなことが
どうでもよくなる。

まずスーツケースをコロコロするにしても、
雪の道はなかなか大変。
もう片手もバッグでふさがっているので、
もし、悪い人がやってきてと思っても、
「荷物をとられてもしょうがないかなぁ」と思えてしまう。

東京に住んでいると、
なかなか雪道を歩くという経験がないだけに、
よちよちとおぼつかない。
実際に2回ほど転んだけれど、
地元のひとも転んでいた。

マイナス2,3℃と昼間は比較的に暖かな感じだったのだけど、
さすがにずっと外にいると顔がこわばってくる。
耳が隠れる帽子と手袋は必須。

少し歩いてはカフェやお店で暖をとるの繰り返し。

なので、行動範囲はかなり狭まってしまう。

とくにヘルシンキは何度か訪れているというのもあり、
ここだけはぜひ! という場所もなく、
なんとなく町中を歩いて、
海まで行って、本屋さんや郵便局や、
スーパーマーケット、
そしてインテリアショップを見ているうちに
2日間なんてあっという間に過ぎてしまった。




スウェーデン アーランダー空港 ターミナル3】

ヘルシンキからストックホルムまでは飛行機で1時間。
時差が1時間あるので、
到着するとまた出発した時刻に戻っていることになる。
一回、出て国内線に乗り換え。
ゴットランドに行く飛行機はターミナル3からということで、
そこまで歩いていくことにする。
が、遠い!! インフォメーションのお姉さんに聞いたら
「10分くらい」という話だったのに…。
長い廊下みたいなところをずんずん歩いていくと、
どんどん寂れていく。荷物は重いし、
トイレにも行きたいし〜〜〜とあせる。
着いたところのチェックインカウンターは、
2コしかなくて、なんだか薄暗い…。
でも、とりあえずはチェックインして、
荷物検査を受けてゲートに向かう。
が、これが間違い…。
ゲートのところはカフェがひとつあるだけで、
あとはお店も何もない…。
あとでATMでお金をおろすか両替しようと思っていたので、
スウェーデンクローネが1krもない。
ゴットランドに着くのは夜だしなぁ…とちょっと不安になる。
でも、カード社会だからどうにかなるかと開き直って、
カフェでコーヒーとお菓子を買って、
あとは読書タイム。飛行機の時間まで3時間以上も、
さびしいゲートで過ごす。乗客もほとんどいなく、
ときどき、本当にここでいいのか不安になる。
そしてひとが少ないせいか、寒かった。
でも、あまりのひとのいなさに、
また「どうでもいいか」という気持ちになり、
パスポートなど大事なもの以外の荷物を置いて、
トイレに行ったりふらふらもしていた。
(ちょっと関係ない話だけど、こちらのトイレは、
男女のマークの下に両方とも赤ちゃんのマークが書いてあって、
さすが男女平等の国だなぁと思った。
日本でもそういうところは増えてきてはいるとは思うけれど)

搭乗時間になってゲートをくぐったら、
そこは外!! 久々に飛行機まで歩いた。
(昔、シチリアに行ったときも歩いた)
おまけに雪。タラップにもうっすら雪が積もり、
滑らないかどきどきした。
飛行機は小さなプロペラ機で、さすがにオフシーズンだから、
乗客は20人もいなかった。
そして席もフリー。
前のほうの窓際の席に座り、寒いのでコートも着たままだったのに、
わたしの前に座った男性は半袖だった…。
そして本当に不思議なのだけど、
離陸前にこてんと寝てしまい、着陸寸前まで起きなかった…。
ゴットランドの空港ももちろんゲートまで歩き。
なんか遠いところまで来たなぁと思った。