冬の旅の断片 2011 その3

【赤いコートの老婦人】

ゴットランドで迎える朝。
そのとき、ふとヘルシンキのホテルに
プラグアダプターを忘れてきたことに気がつく…。
やばい…。携帯電話もiPhoneも充電できない…。
一難去って、また一難。
いくらなんでも、この島には日本のプラグを
北欧仕様に変換するタイプは売ってないだろうなぁと思う。

でも、一応地図でショッピングセンターをチェック。

食堂のあるホールに降りていくと、
若い女性がいた。
軽く挨拶したものの、
チェックインの記入もパスポートの提示もなし。
いいの?
「明日は何時に出発するの?」と聞かれたので、
フェリーの時刻を言うと、
「じゃあ、朝食を用意しておくわね」と言われて、
「お金も今日払う?」とゆる〜い感じ。

食堂は石壁のサンルームになっているけれど、
冬はちょっと寒い感じ。

朝食は、いつものようにチーズ、ハム、野菜少々、フルーツ、
ジュース、コーヒー、シリアル、
それにパンがいくつかと甘いケーキも。

お客さんはわたしだけ? と聞いたら、
一応3組いるらしい。
でも、誰にも会わなかった。

部屋に戻って支度をして、
また一階に戻る。
で、宿泊代をカードで払ってでかける。

また入れなかったらどうしよと、
ちょっと不安になり、
とりあえず昼過ぎには一度戻ろうと思う。

地図をあらためて見ると
ホテルがあるのは旧市街の港の近く。

港からゆるやかな高台になっていて、
城壁で囲まれた小さな街の中に、
教会などの廃墟がいくつか点在している。

外は雪。少し風が強い。
転ばないようにゆっくりと下を向きながら、
坂道を上がっていく。

小さな家が並ぶ街の雰囲気は、
以前行ったエストニアのタリンや、
フィンランドのポルヴォーの街にも似ている。

カフェやお土産屋さんなどがあるけれど、
閉まっているお店も多い。

人通りも少ない。

あっという前に城壁のとこまでたどり着き、
そこを抜けたら、当たり前といえば当たり前なのだけど、
現代的な街の風景に変わった。
スーパーマーケットやいくつかの店がならぶ
ショッピングモールみたいなところがあって、
とりあえずATMでお金をおろす。
ほっ。
で、スーパーマーケットに行って、
水やジュース、お菓子などを少し買う。
もちろん日本のプラグを北欧仕様に変換できる
プラグアダプターは売っておらず…。

外に出たら、さらに雪が強くなってきてた。

廃墟の遺跡を見ながら帰る。

地図を持ってぼ〜っと立っていると、
道に迷っているのかと思うらしく、
結構、ひとが声をかけてくれる。

とくにおばあさん。

本当はとくに目的もなく歩いているだけなのだけど、
なんとなく親切にしてくれるのが申し訳なくて、
「どこに行きたいのか?」と尋ねられては、
「ここに」と適当に地図の廃墟の場所を指す。

赤いコートを着たおしゃれなおばあさんも、
そんなひとり。

「どこにいくの?」と問われて、
「あ、ここに」と近そうな場所の教会あとを地図で示す。
「雪がひどいし、今日は道が滑る」と言い、
なんといっしょに行きましょうと案内してくれた。

わ、どうしよ…。用事あるんじゃないのかなぁ?
と思いつつも、うまく断る言葉が見つからず、
そのまま、その廃墟の教会まで連れていってもらう。

優しくて可愛らしいおばあさん。
白い髪と赤いコートのコントラストがとてもキレイで、
白い雪の街にもよく映える。

歩きながら「ここからの景色がいいわよ」とか、
植物園を通って、木の名前などを教えてもらう
(わからない部分も多かったのが残念)

その廃墟は雪の中なのに、
なぜか緑で覆われていて、
なかなか雰囲気がある場所で、
おばあさんにすごい感謝。

じゃあ、とその廃墟の前で別れて、
しばらく歩いていたら、
また、そのおばあさんに会った。

「ここもいいわよ〜」とまた別な通りを教えてもらった。

もっとちゃんと言葉ができれば、
お礼にお茶でも誘って…といろいろ考えてしまった。

でも、そのおばあさんに会って、
親切にしてもらってほんわかと温かい気持ちになった。


続く

バルト海をいく】

ストックホルム

【雪のある暮らし】

【旅の終わり】